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高導電性CNT/樹脂複合材料の開発

下請中小企業自立化基盤構築事業


■ ナノカーボンを樹脂への分散技術の最適化

 樹脂の種類として、熱硬化性樹脂とUV硬化性樹脂とがある。熱硬化性樹脂の多くはペレットや粉末状態であり、UV硬化性樹脂の多くは液体状の原料である。したがって、それぞれには適したナノカーボン分散方法を検討する必要がある。

 熱硬化性樹脂においては、固体である樹脂ペレットを溶かし、それにナノカーボン粉末を混合する必要がある。この場合、スクリュー型の押出機が一般的に使われている。当社では、フィルム作製機能を有する小型の1軸押出機を新規導入し、ポリエチレン樹脂にカーボンナノチューブを混合分散し、ナノカーボン/樹脂フィルムの試作実験を各種パラメータ(熔解温度、スクリュー送り速度、T台のスリット間隔、チルロールの回転速度、タッチロールの圧力など)について行った。その結果、最適化したパラメータの下では、添加できるカーボンナノチューブの添加率が約5%までであることが分かった。それ以上にすると、フィルムが破れる現象がしばしば現われた。なお、本方法では、薄いフィルムの作製が得意であり、他の基材表面への貼り付けは可能ではあるが、一体化の塗布膜の作製は不可能である。

樹脂フィルム成形装置

樹脂フィルム成形装置

試作サンプル(CNT=1%, 3%, 5%)

試作サンプル(CNT=1%, 3%, 5%)

 一方、ナノカーボンを液体状のUV硬化性樹脂に分散させる方法として、研磨剤混入のミリング装置と研磨剤不要のミキサー装置が存在するが、ナノカーボン表面のマイクロ泡が効率よく除去できる実績を有する研磨剤不要の真空型自転公転式ミキサーを導入した。当社内で生産したカーボンナノチューブと市販のウレタン系UV硬化性樹脂と用いて、各種パラメータでの混合分散実験を行い、樹脂液体の粘度に適したナノカーボンの最大添加率を調べた。最適化した自転速度、公転速度および容器形状(新しいノウハウの一つ)の下で、ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂の低粘度タイプに対しては約4%まで、高粘度タイプに対しては2%までの添加率が可能であることがわかった。それ以上の添加量を添加すると、流動性が大幅に落ち、後工程の塗布プロセスに支障をきたしてしまった。なお、本方法では、自立した薄いフィルムの作製には向いていないが、他の任意形状の基材への表面塗布膜の作製には適している。

■ ナノカーボン樹脂複合基材の作製技術の確立

 ナノカーボン/樹脂複合材料を機能性のあるデバイスに応用する場合、3次元形状のデバイス基材に、ナノカーボン/樹脂複合材を、ユーザーが要求する特定の回路パターンとして成形する必要がある。それを実現するには、回路用の溝を有する基材を作製する必要があり、3DプリンタとCNCルータを導入した。

3Dプリンタ

3Dプリンタ

3Dプリンタで作製した基材サンプル

3Dプリンタで作製した基材サンプル

■ ナノカーボン樹脂複合基材の成形加工技術の確立

 上述の基材に対して、ナノカーボン複合樹脂を基材の中の溝に塗布し、硬化させ、導電性/熱伝導性回路を有するデバイス基材にする。そのために、サンドブラスト装置とUV硬化装置を導入し、回路パターンの成形加工を行った。具体的には、上述の導電回路用の溝を有する基材に対して、サンドブラストによる表面処理を行い、液体に対する濡れ性を高めておいてから、前述の自転公転ミキサーで混合分散したナノカーボン/樹脂のペースト材料を含浸塗布し、導入したUV硬化装置で硬化させた。

UV樹脂硬化装置

UV樹脂硬化装置

 UV硬化装置のUV照射距離やUV強度、照射時間などは非常に敏感であることがわかった。照射が強すぎると、照射熱が大量に発生し、それによって基材そのものが変形したりする現象が判明した。照射パラメータは、使用する基材の樹脂材料の特性にチューニングしなければならないが同じ種類の基材でも、経時変化で物性が変わり、その都度チューニングする必要があることが分かった。

UV硬化させた後の回路付デバイス基材(黒い部分がナノカーボン/樹脂)

UV硬化させた後の回路付デバイス基材(黒い部分がナノカーボン/樹脂)

■ ナノカーボン樹脂複合部品の表面処理技術の最適化

 前述のナノカーボン/樹脂複合フィルムと、上述のナノカーボン/樹脂複合回路付デバイス基材に対して、本事業のキーテクノロジーである表面処理を行い、その最適条件を検討した。各種パラメータで得られた処理サンプルに対して、新規導入した大型表面処理装置、リークディテクター、既存の導電性評価装置と、新規導入した熱拡散率測定装置を用いて、品質評価を行った。

 大型表面処理装置で表面処理したナノカーボン/樹脂複合フィルムに関しては、表面処理条件により、微小のマイクロ孔が生じたりすることがあるため、リークディテクターを用いて、レーザ処理後のフィルムのガス透過性(Heガスの漏れ度合)を調べることにより、マイクロ孔の有無を判断し、良品かどうかを判断した。フィルムタイプのサンプルおよびデバイスタイプのサンプルの導電性については、表面抵抗測定装置を用いて、レーザ処理前後の導電性を調べた。フィルムタイプのサンプルの熱導電性については、新規導入した熱拡散率測定装置で評価した。 

 フィルム成形装置で作製したナノカーボン/樹脂複合フィルムの場合、各種ナノカーボン添加率において、それぞれ、以下の体積抵抗値および表面抵抗値が得られた:

樹脂へのCNT添加率 表面導電性改善率
  0%  改善なし
  1%  5倍
  3%  12倍
  5%  50倍